ケアマネージャーが思うことを呟いていくブログ

現職ケアマネ、前職社会福祉士、介護福祉士が福祉、医療、その他興味があることを書き捨てるだけの自己満ブログ

「吃音の世界」レビュー

私はもともとそこまで読書は好きではなかったが、大人っぽくてかっこいいという理由だけで読書を始めて以来、毎日三冊の本を決まった時間に読むことが習慣になっている。

一冊は趣味の本、二冊目は仕事関係の知識の本、最後に全く関心のない分野の本だ。
意外なことに、一番興味が出るのが全く関心のない分野の本だったりする。自分の知らない世界を垣間見れる気がして、興味のない本を嫌々本屋で買うことがやめられらない。
買うときには興味がないのだが、読み始めると毎朝早く読みたいとワクワクしている。

今回は、仕事関係というほどでもないが、障害についてということで、
菊池良和さんというお医者さんが書かれた「吃音の世界」という本のレビューを書こうと思う。

吃音については、一昔前よりメディアに取り上げられる機会も増え、数年前にヒットした「英国王のスピーチ」は、映画館で見て、内容よりも「吃音」をここまで当事者の目線で語られる映画ができたのかと感動した覚えがある。
最近も映画かドラマで吃音をテーマにしたものがやっていると聞いたが、まだ見られていない。

しかし、一般の吃音に対する理解度はまだ低く、吃音=どもりを「かむ」ことと同じようにとらえられがちである。
それによって、真似をしてからかわれたり、もっとゆっくり話なさいと指導されるなどして、本人に一生消えることのない傷を負わせることが多い。

吃音は、障害かそうでないかと議論されることがあるが、はっきり言って障害だ。
不安障害やうつ病などに発展することが多く、そもそも自分の意図しない原因によって社会のなかで生きづらさを感じるのだから、障害以外の何者でもない。

筆者は、自信も吃音があるお医者さんがであり、「吃音ドクター」とよばれ日々吃音患者と向き合っている。
吃音症当事者の気持ちを理解しながら、吃音患者と客観的に向き合うという、まさに吃音症のスペシャリストだ。

この本を読んでまず感じたことは、「医学は日々進歩している」ということだ。

昔の吃音の考え方は、
吃音は親のしつけのせい
吃音は直すべきもの
吃音は言い換えによって軽減することが望ましい

というのが当たり前であったように思うが、
最近はそうではない、
少なくとも筆者の治療方針とは反するらしい。

本のなかには、治療の現状、患者の悩みと治療後の変化
など、教科書的な内容ではない、吃音の当事者であり現場の医師だからこそ言える、筆者の対応と患者の心境の変化が書いてある。
これによって、読者は発言の根拠と、それによる反応を知ることができ、私の場合言語障害の利用者への対応へいかすことができると感じた。

また、個人的には、この本は当事者向けというよりは、その家族へ向けたもののように感じた。
当事者が読むには少しひっかかるような、ネガティブになってしまうようなことも書いてあった。

しかし、それも含めて吃音の今が書いてある。
読み終わって「医学は日々進歩している」、そして「日々学び続けなければ」と思わせてくれる一冊だった。