BPSD
介護施設のほとんどの利用者は、程度に差はあれど少なからず認知症を発症している。
認知症の一番の問題は、中核症状よりも周辺症状だろう。
つまり、徘徊、帰宅願望、暴言暴力などだ。
一般的に、BPSDは、環境や対応などの要因で生じるものとされている。
適切な環境、対応であれば、BPSDは消失、軽減するといわれている。
多くの介護施設では、BPSDを軽減するために、どのような環境、対応が良いか、検討している。
全ての利用者に共通する最善の環境、対応方法はない。
しかし、ある程度対応や環境の基本となる考え方はあると思う。
それは、利用者が「自分は歓迎されてここにいる」と思えることだ。
これは、「尊厳を守る」こととも言える。
介護保険法にも書かれている、「尊厳の保持」だが、
具体的にどういうことなのかいまいちわからない人が多いだろう。
解釈の仕方は人それぞれだ。
私は、上に書いたように「存在を歓迎すること」であると考える。
それは、ここにいてもいいですよ、とただ言うだけではない。
目線、表情、仕草、声、言葉、ボディタッチ、など全てを使う。
もちろんこれだけで利用者が完全に安心して「歓迎されている」と思える訳ではない。
これは、利用者が安心して「ここにいてもいい」と思うための前提、準備にすぎない。
利用者を受け入れるための基本的姿勢として、目線~ボディタッチなどで歓迎する姿勢を見せ、
そこから様々な要因が合わさり、
利用者が「ここにいてもいい」「ここにいたい」と思うことができ、
結果BPSDが消失、軽減することに繋がる、と考える。
考えてみれば当然のことだが、
私たちでも新たな環境では何となくソワソワする。
そこで「歓迎されていない」と感じれば、帰ろうと思う。
しかし、「ようこそ、いらっしゃいませ、待ってましたよ」と、笑顔で歓迎の姿勢を示されれば、「ここにいてもいい」と思えるだろう。
特に認知症が進んだ人、線ではなく点で生きている利用者であれば、感情の記憶がその後の行動に大きな影響を与えやすくなる。
つまり、以前「ここにいたくない」と不快な気持ちになると、その不快感はより強く記憶され、以降その場所は何となく不快な記憶を思い出す場所となる。
逆に、以前「ここにいたい」と快適な気持ちになったことがあれば、その場所は快適な場所となる可能性がある。
上に書いたように、BPSD軽減のための対応に全員に共通するものはない。
しかし、BPSD軽減のための共通した環境作りは存在する。
それは、利用者を歓迎する気持ちをもち、接すること、
また、常に「自分ならどう対応されたら、歓迎されていると感じるか」と考えておくことだ。
そうすることで、利用者の不安そうな表情を察知し、その利用者がどう対応されたら歓迎されていると感じるかを瞬時に考え、実行し、利用者の安心の支援に繋げることができるだろう。