ケアマネージャーが思うことを呟いていくブログ

現職ケアマネ、前職社会福祉士、介護福祉士が福祉、医療、その他興味があることを書き捨てるだけの自己満ブログ

合理的配慮

2016年にできた障害者差別解消法により、障害者一人ひとりに合わせた「合理的配慮」が、雇用主や行政の義務となった。

努力義務ではなく義務となったのは、障害者当事者にとってはとても大きい。

ただでさえ障害者は生きる上で弱者になりやすいため、障害者が地域で生きる権利を法律が保障するための枠組みづくりという意味では非常に効果があるものだろう。

しかし、「枠組み」を作るだけで、問題は解決するだろうか。

言い換えれば、枠組みを作ればそれだけで障害者は雇用主や行政から合理的配慮を受けられるのだろうか。

現状を見てみると、とても合理的配慮がなされる状況ではないところが多いように思える。



「合理的配慮」を行うことは法律で決められた義務であるということは一度置いておいて、
合理的配慮を行う、受けるためにはどういう条件が揃うと可能になるのか。

例えば雇用契約上では、
雇用主の「理解」と非雇用者(障害者)の「申し出」が必要であると考える。

まず、雇用主の「理解」とは、
具体的に、これから雇う障害者はどのような不便があって、それが業務上どのように問題となるのか、それをどのように解決するか(会社内の資源の活用、外部のサービスの活用)を検討する必要がある。

そのために、非雇用者(障害者)側は、自分の障害と、その障害が働く上でどのように影響するかを詳細に伝える必要がある。


このやり取りの過程の中に、障害者への「合理的配慮」がなされにくくなる原因があると考える。

つまり、
雇用者側は、障害の特徴の理解と、障害ごとにどのようなことを留意するべきかを知識として持っている必要があるが、
それの実現方法は企業に丸投げ感があり、一般企業が障害の理解を企業努力のみで向上させようとしても限界があることは明らかであり、

非雇用者側は、業務の内容を把握し、障害が業務にどのように影響するかを、自分で詳細に伝えることは難しい場合が多い(特に知的、精神障害者)。


このような原因を無視して、国や障害者が企業に対して「障害者差別解消法に基づき、合理的配慮を!」と一方的に主張するのは根本的な解決にはならない。

この問題を解決するには、医療福祉専門職が間に入って就職支援をする仕組みを、制度として作ることが重要であると考える。

専門職であれば、障害者の障害を詳細に把握し、その障害が業務上どのように問題となるかをアセスメントして企業・障害者本人と解決方法を模索し、雇用契約まで見届けることができる。
専門職として、障害の理解がない企業に対して個別に理解を促すこともできる。

さらに定期的にモニタリングをし、新たな問題が出てきても、本人・企業・専門職で解決する仕組みを作ることで、障害者、企業が安心して雇用契約を続けることができるのではないか。


いくら法律で企業側に「合理的配慮」を押し付けても、それは企業側の混乱だけで問題解決には至らないかもしれないし、それならと重度の就業希望の障害者が面接を門前払いされることにも繋がりかねない。

社会の中で弱者になりやすい障害者と、企業の間に専門職を入れる仕組みをつくり、両者が対等なやり取りができる環境を国が作ることが、ノーマライゼーションの社会づくりのためには重要なことだと思う。